2015年11月12日に、埼玉県警鉄道警察隊に行ってきました!
殿岡万里
娘と私が痴漢と悪戦苦闘していた頃、痴漢抑止シールがメディアに取り上げられて、埼玉県警鉄道警察隊の痴漢犯罪に対する積極的な取り組みを知りました。
それまでは孤立無援の心細さを感じていましたが、痴漢被害者に対して「こういう工夫をして被害にあわないように気をつけてね」だけではない、一歩も二歩も踏み込んだ対策に勇気をもらっていました。
でも埼玉県民ではない私達、被害者の事よりも冤罪懸念を大きく報道するメディア…。喉から手が出るほど欲しいシールでしたが、躊躇している間に娘が痴漢を捕まえ、バッジ制作の流れになり、ひとまず痴漢問題から解放されたのでした。
それでも埼玉県警は私達の心の中で、最後の砦であり続けました。今回、NHKの番組のお陰でご縁が繋がり、訪ねることが叶いました。埼玉県警が痴漢問題に積極的に取り組む理由
埼玉県警鉄道警察隊の隊長(女性)・副隊長(男性)はともに警察署などで犯罪として痴漢を扱ったことはありましたが、鉄道警察に赴任して改めて、この地域の鉄道路線に痴漢が多発していたことや痴漢犯罪の深刻さを知り、問題解決に取り組むことにしたそうです。
あのシールの目的は痴漢を抑止すること
もともとこの痴漢抑止シールは東海大学のゼミで女子大生が原案を考え、それを神奈川県の印刷組合が制作し、キオスクで販売していました。ところがスポーツ新聞で「冤罪を助長する」と取り上げられ、販売を自粛したようです。そのため被害者が入手しづらくなってしまったのです。
埼玉県警はその話を知り、キャンペーンの一環として取り入れました。しかしこのシールは痴漢冤罪被害を懸念する人々から批判を受けました。痴漢問題に積極的に取り組んでいるゆえに埼玉県警は様々な反響を受けています。でも被害にあって苦しむ人がいる以上、痴漢問題を放置するわけにはいかない。その信念で現在も真剣に対策を考えています。
そもそも痴漢抑止シールの使用方法が間違って理解されているのが、冤罪云々とメディアやネット上で議論が起きた原因ではないかと私は思っています。
このシールの最大の目的は、私達のバッジと同じで、「このシールを見せることにより、痴漢にやる気を失わせる」という抑止効果だからです。もしも狙っている女性のスマホにシールが貼ってあったら、痴漢行為の証拠が残されると思ったら、それでも犯人は行為に及ぶでしょうか。このシールのインク部分を犯人の手に押し付けるのは、それでも行為に及んだ犯人を確保するための最終手段なのです。
埼玉県警では被害者の要望によりこのシールを配付していますが、その際にも利用者に正しい使用方法を説明し、冤罪被害を生まないように配慮しています。これまでに警察や公的組織で約7000枚を配付しましたが、実際にインク部分を使用した事例はなく、この痴漢抑止シールを目につくように貼っているだけで、痴漢に対する抑止効果があると考えられます。
まだまだある埼玉県警の痴漢対策
① 埼玉県警は鉄道会社・駅ビルなど商業施設・高校などと連携して埼玉県鉄道痴漢犯罪防止連絡協議会を組織し、痴漢犯罪を防ぐための横のつながりを作っています。
② 県警が高校に出張し、痴漢行為を防ぐ方法や、被害の対処方法を伝えています。そのためのマニュアルもあり、女子高用、共学用と2種類用意され、被害者となりやすい女生徒だけでなく、男子生徒にもどう守り対処するかを説明しています。本当に素晴らしい取り組みだと思います。
③ 毎年6月と10月には痴漢防止キャンペーンを実施し、高校生による痴漢防止ポスターのコンテストを開催。受賞したポスターはティッシュの裏に印刷して配布しています。
啓発活動など様々な取り組みにより、埼玉県は全域で痴漢に対する防犯意識が高いと感じました。
痴漢問題と冤罪被害問題について
「痴漢はひどい犯罪で、学校に行けなくなってしまい人生が変わってしまうこともある。社会が「痴漢は重罪だ」と理解しなければならない。」と副隊長がお話しされたように、痴漢犯罪は、その被害の深刻さと社会の認識がかけ離れていると私も感じています。それはなぜでしょうか?
副隊長のお話では、
① 痴漢冤罪被害は確かに問題なのだが、痴漢被害の実態が社会に認知されていないのが、問題を複雑化させている。
② 痴漢被害者は泣き寝入りすることが多いため、表に出てこない。
③ 被害者に「どうして言わないのか?」をヒアリングした結果、
●痴漢がいるのは普通の事だから、騒ぎ立てたり訴えたりするのは普通じゃない。恥ずかしい。
●我慢するべきだ。
そんな風に思い込んでいる女性が多いことがわかった。
「周りの大人が「痴漢くらい」といった態度や言動を重ねてきた結果、そうした風潮をつくりだしています。「痴漢行為を許さない」という風に社会の意識を変えていかないといけない。」と語られ、その信念が、埼玉県警鉄道警察隊の積極的な姿勢につながっているのだと思いました。
私達の痴漢抑止バッジについて
NHKの取材により、私達の痴漢抑止バッジについてのコメントを求められ、鉄道警察隊の皆さんで意見を交わしてくださったそうです。
○抑止力があるのだろう。
○被害者が作ったので、効果があるだろう。
○冤罪を生まないのが良いアイデアだ。
という意見が出たそうで、日々痴漢問題に向き合っている警察の方からこのようなコメントが頂けるのは大変心強いものです。
また、高校生の痴漢防止ポスターコンテストの表彰式の際、先生が「痴漢抑止バッジはいいアイデアですね。」とコメントされていたことも教えてくれました。
痴漢抑止バッジも、埼玉県警の痴漢抑止シールと同様に抑止効果を目的としていますが、着用していても被害にあってしまった時の対策が必要であると考えています。それはシールの場合インクなのですが、私達のバッジにはそれがありません。
痴漢抑止バッジをつけるということは、「痴漢に泣き寝入りしない!」という覚悟を持つことでもあるのですが、新入生が通学に慣れないうちなどは、被害にあうと体が固まってしまい声も出ないことがあります。その被害を食い止めるため、心の拠り所となる防犯グッズとの併用を勧めたいと思い、バッジを新入生に配布する際に一緒に配布できるよう、痴漢対策マニュアルを作成しようと考えています。