当センターは、痴漢被害に遭いやすい人に「痴漢抑止バッジをつけて身を守りなさい」と言いたいわけではありません。電車・バスなどで多発する痴漢犯罪に対する社会全体の意識を変えていきたいと考えています。
そのために、毎年夏に学生を対象とした「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」を開催しています。コンテストは、第8回(2022年)より警察庁・文部科学省・国土交通省の後援をいただいております。
コンセプト
学生を対象にした理由は、3つあります。
1つ目は、バッジのターゲットユーザーと同世代のデザイナーに参加していただき、10代の子たちの感性にあうデザインを考えてもらいたいからです。毎年、デザインコンテスト参加者の3割〜4割が男子です。
2つ目として、学校の先生方にこの活動を知っていただき、授業で痴漢抑止バッジデザインを取り上げ、学生たちの性犯罪に対する意識改革を行ってほしいと思ったからです。
2015年にクラウドソーシングでデザインを公募した際に、多くのデザイナーが「痴漢問題について改めて考え、調べた」といってくださいました。
大学、専門学校、高校でデザインを学ぶ学生達、実際に被害にあう世代の人たちが、男女ともに痴漢犯罪について考える機会を持つことは、ジェンダー意識の高いデザイナーを育てる一助になるだろうと考えています。
3つ目として、保護者をはじめとした大人達への波及効果を狙っています。学生が痴漢抑止バッジデザインコンテストに参加すれば、保護者の方達も「自分の子供がこういったコンテストに参加している」と痴漢問題に関心を持ち、世代を超えて話題が広がるでしょう。
審査
一次審査は大学生が参加し、応募作品を60点までに絞ってもらっています。二次審査は中学校、高校の協力を得て、生徒のみなさんに気に入った作品を選んでいただきます。
投票数を参考に、コンテスト委員会で入賞12作品を決定。最終審査はWEBと商業施設内のギャラリーに展示され、一般投票を募ります。。閉じた空間ではなく、多くの方にコンテストに参加していただき、電車内バスなど公共交通機関内の痴漢犯罪について考えて一緒に考えてもらう機会としています。
性犯罪のない社会を目指して
今、デザインを学んでいる学生は、将来、社会に出てデザインで情報発信をする立場になります。発信する側の人たちが、痴漢犯罪やジェンダーに関して高い意識を持っていれば、これからの世の中の考え方に影響を与えていくだろうと私たちは期待しています。
2016年の夏には「うな子」という、鰻の産地をアピールするために鰻を擬人化した水着の女の子を養殖する動画があり、賛否両論が起こりました。「駅乃みちかさん」問題では、元々の東京メトロのキャラクターを萌えキャラにし、制服のスカートが不自然な描かれ方をして批判を集めました。
他にもこれまでに、キャラクターやデザイン上の性的表現で批判の声がおきたケースは多数あります。このような表現の場には、必ずデザイナーが関わっています。もちろん、デザイナーに全ての責任があるわけではありませんが、表現に関わる人たちが学生時代に少しでも痴漢問題やジェンダー問題などについて学ぶ機会があれば、さまざまな面で少しずつ社会が変わっていくことでしょう。
そうした思いがあり、痴漢抑止バッジデザインコンテストは、学校と連携して開催していきたいと考えています。学生にとっても、同じ年頃の子達が被害者であるだけに当事者意識を持って取り組めるでしょう。
ターゲットとテーマが明確であり、バッジのサイズも適当な大きさで「課題として取り上げやすい」と参加してくださった先生から好評をいただいています。入賞したバッジは製品化して販売されます。就職活動時のポートフォリオに記載できますので、学生にとってもコンテストに参加するメリットもあります。
過去のコンテスト